『ソニック・ザ・ムービー』鑑賞レビュー【評価・感想】※ネタバレなし

3.0
レビュー
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概要

はじめに

 『ソニック・ザ・ムービー』は2020年公開の日米合作映画だ。初公開された実写版ソニックのデザインがあまりに不評で急遽再デザインを実施、大幅な作り直しを決断したことで公開が延期となり話題となった(旧デザインは「アグリーソニック」として、後に『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ(2022)』にカメオ出演している)。

 本作はゲーム世界の延長になく、映画独自のオリジンストーリーを展開している。ソニックというキャラクターや、ゲームを象徴する「リング」に転送ポータル機能が付くなど映画化にあたって多くの変更点が加えられているが、シンプルなファミリームービーとして楽しめる一作ではある。しかし、映画に感情移入を求める人やゲームのソニックが好きな人にとっては、この映画の主役がソニックである理由を見つけることは難しいかもしれない。

あらすじ

 遠い宇宙のある惑星に住むソニックは、自身のもつ特別なパワーのせいで他の種族から命を狙われていた。ある日襲撃を受けたソニックは、育ての親ロングクローが使ったリングの力で地球へ逃れる。それから十年、モンタナ州グリーンヒルで成長したソニックは誰にも見つからないようにひとり生活を続けていたが、寂しさを紛らすように超音速で走ったことで力の一部を解放し大停電を引き起こしてしまう。アメリカ政府は謎の力の正体を突き止めるべくドクター・ロボトニック博士を召喚するのだった。

 すでにできあがったゲーム世界と人間世界をつなぐのではなく、映画オリジナルの存在としてソニックが何者であるのかを語り直したオリジンストーリーとなっている。ソニックは異星人として地球に転送され、10年もの間誰とも関わりを持つことなく孤独に過ごしたというなかなかハードなバックストーリーを負うことになったが、描写自体はシリアスにならない程度に留められている。

意外とある映像化ソニック

 『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』シリーズは何度も映像化されている。最近はNetflixにて『ソニック プライム』が、TVアニメでは『ソニックX(2003)』の他、90年代にはOVAや海外製作でもアニメーションが作られている(特に『~X』はソニックが人間世界に飛ばされる点で共通している)。

 余談ではあるが、映像化作の中でもゲーム作品『ソニック ワールドアドベンチャー(2008)』のプロモーションとして作られたフル3Dアニメーション短編『NIGHT OF THE WEREHOG ~ソニック&チップ 恐怖の館~』は、ゲーム内のプリレンダムービー制作を担当するセガ内のVE研が担当しており非常によくできているのでぜひ探して鑑賞してほしい。

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よいところ

明確でシンプルなプロット

 映画の進行は至ってシンプルだ。ソニックの出生と地球にやってきた理由を簡潔に説明した後、ハプニングで無くした「リング」を求めてサンフランシスコへ向かい、敵もそれに続くという追いかけっこの構図は終始ブレることはない。小難しい伏線も過度に苦悩するキャラクターもなく、ファミリームービーであることにまっすぐで単純明快だ。

いつものジム・キャリー

 今作のドクター・ロボトニックは、捻りの少ないストーリーやアクのない登場人物たちとのバランスに必要な存在だ。どうみても”いつものジム・キャリー”にしかみえないが、そもそもエッグマン自身に「世界征服を企むマッドサイエンティスト」程度の性格付けしかされていない。ジム・キャリーのコミカルで時に狂気的な演技によって原作よりもソニックに負けない強烈な存在感を放つキャラクターに仕上がっている。

愛らしくもソニックのキャラクターは賛否ありそう

 最近のソニックゲームを遊んでいる人ほど、ソニックはクールで頼れる兄貴分というイメージがあるかもしれない。本作のソニックは映画化にあたり、掘り下げの余地を作るために完成されたイメージを崩し、未熟な要素を入れ込んでキャラクターを再構築している。寂しがりで友達を欲し、少し幼い印象の映画の彼には賛否が割れそうだし、ゲームファンとしてはゲームと同じあのソニックを登場させてほしい気持ちはあるが、ソニックをよく知らない人にとっては共感を持ちやすいキャラクターになっているように感じる。

 本作のソニックはゲームとはまったく異なる物語となっている(そもそもゲームでソニックのオリジンは描写されていなかったと思う)。ファミリームービーとして制作するにあたり、より広く受け入れられる作品にするため、意図的にゲーム世界のソニックと映画世界のソニックとはその役割を切り離して制作しているように感じた。

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気になるところ

描写が弱すぎる人間キャラクター

 人間の主人公トムは初対面の宇宙人をほとんど疑いなく信用するただの「良い人」でアクがない。田舎の御用聞きをやめ、都会で警察官として自分の力を試したいと物語序盤に行動に移すが、それがたいしたきっかけもなく見直される。自分の力を試すために新天地に行くこと自体悪いことではないはずが、どうして諦めてしまったのかはっきりしない。この決断がソニックの旅の経験とリンクしておらず、観客にとって特に意味のない結末になっている。

ソニックとの関係描写の不足

 トムとソニックが旅を通して互いを友達と呼べるほどの関係になれたかも疑問だ。彼らは劇中で過ごして時間は決して長くなく、ロボトニックの追跡を一緒に乗り切る場面はあるものの、例えば前述のようなトムが抱える問題をソニックの助言によって解決するというような、ふたりの関係を一段と深めるドラマチックな出来事はない。なんだか浅い関係値に見えるままにクライマックスを迎え、「ソニックは俺の友達だ」と豪語するシーンは取ってつけたように不自然に見える。

 トムの妻マディ、姪のジョジョ、義姉レイチェルのようにソニックと交流を深めるためのキャラクターは揃っているのに、彼女たちはおまけのように登場シーンが少なく、シナリオに活かされていない。あの赤いスニーカーのシーンも、ソニックのオリジンストーリーとして重要な意味をもつシーンにできたはずだが、ただ「ボロボロだったから新しいものをあげた」という理由以上のものがなく、物語的な役割を持っていないのは非常に残念だ。

総評

 シンプルなプロット、親しみを持てる主役、分かりやすい悪役、ソニックが多くの人に受け入れられるためにソニックを構築しなおしている。音速で走り回るソニックのアクションシーンは見応えと癖前回のジム・キャリーの演技によって最後まで飽きずに見続けられるが、ソニックと人間との関係性の描写は弱く、感情的な盛り上がりは少ない。

『ソニック・ザ・ムービー』をストリーミングで観る

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