ハードのライフサイクルで定番化したスリム化
コロナ禍の半導体不足による長期的な品薄が数年にわたり続いていたPlayStation5だが、2023年に入り供給が安定しだし誰もが容易に入手できる状況になったのもつかの間、最近になりPS5スリム版登場の噂が各ニュースサイトで報じられている。
もはや当たり前に登場しているハードサイクル半ばの薄型化だが、据置機・携帯機問わず、ほぼすべてのハードが改良、製造技術向上、コストダウン、等様々な理由からマイナーチェンジ(モデルチェンジ)を繰り返している歴史がある。
単純なカラーバリエーションの追加や、見た目に変化が少なく機能の追加や削除がある場合を「マイナーチェンジ」。わかりやすく筐体に大きく変化があった場合を「モデルチェンジ」として、今回は「モデルチェンジ」についてプレイステーションの歴史から新型PS5の登場を考えてみた。
プレイステーション(初代PS)薄型化の歴史
- 1994年12月3日 – PlayStation(SCPH-1000)発売
- 1997年11月13日 – PlayStation(SCPH-7000)発売 ※DUALSHOCK同梱
- 2000年7月7日 – PS one(SCPH-100)発売 ※所謂スリム版
プレイステーション薄型化の祖
初代プレイステーションも『PS one』として薄型軽量化モデルが発売されている。他のプレステーションファミリーと比べて印象が薄いかもしれないが、これはPS one発売時にはすでに『PlayStation2』が登場した後で、ハードの世代交代の只中だったからだろう。PS2が後方互換機能を有しており、さらにDVDプレーヤー需要も高かった当時、PS2を買わずにあえてPS oneを選択する客層は多くなかったと思われ、近年のハードのライフサイクルとは別に考えた方がいいかもしれない。
体積比は従来型の3分の1となり、直線的なデザインだったPS2とは対象的により丸みを帯びた可愛らしく、イメージカラーも従来色より白に近づけたライト・グレーとなり親近感のある見た目に。軽量化のアピールとして専用の純正液晶モニターも別売で登場し、旅行先に持っていくなどの提案がPRがされていた。
プレイステーション2(PS2)薄型化の歴史
発売
- 2000年3月4日 – プレイステーション2(SCPH-10000)発売
- 2004年11月3日 – プレイステーション2(SCPH-70000)発売 ※スリム版
驚異的な薄型化
最初の登場から約4年半の歳月を経て薄型化。「部品点数を従来製品の“1,614”から“1,216”まで減らし、体積で1/4以下 (約23%) 、質量比で1/2以下 (約45%) にまで押さえられている」とのこと。半分以下になったサイズには当時強烈なインパクトがあり、所謂スリム版が認知されたのはこの頃ではないだろうか。
PlayStation BB Unitなどの一部周辺機器への対応や機能をオミットし、DVDケース2枚重ねた程度の厚みにまでスリム化した。モデルチェンジ当初はACアダプターを本体から分離する形で省スペースを実現していたが、2007年11月発売の最終モデル(SCPHー90000)ではACアダプターすらも内蔵してサイズを維持したのだから驚異的だ。
プレイステーション3(PS3)薄型化の歴史
発売
- 2006年11月11日 – PLAYSTATION3(CECHA/CDCHB)発売
- 2009年9月3日 – PlayStation3(CECH-2000A)発売 ※スリム版
- 2012年10月4日 – PlayStation3(CECH-4000B)発売 ※再スリム版
異例の2回モデルチェンジ
PS3は約3年とPS2に比べて早くモデルチェンジ版を投入している。PS3は最初のモデルが非常に高価(モデルにより5~6万円、マイナーチェンジによって約4万円まで値下がり)で、ライバルとなるXbox360との競争が苛烈化しシェア拡大に苦戦していた背景がある。
1回目のモデルチェンジにより価格は約3万円にまで下がり(重量は約3分の2)、ロゴも大文字アルファベットの『PLAYSTATION3』から『PS3』へ変更しブランド販売戦略が見直され、ここから日本国内においてもシェア拡大が本格化した印象だ。また、ハード末期による2回目のモデルチェンジを経てトップローディング方式を採用するなどさらなるコストダウンを図った。先代のPS2ほどの劇的な削減には見劣るものの、後のPS4のハイエンドモデルを除けば、コストダウンによるモデルチェンジはPS3の2回は異例の回数だ。
プレイステーション4(PS4)薄型化の歴史
発売
- 2013年11月5日 – PlayStation4(CUH-1000)発売 ※北米発売日、国内は約4ヶ月遅れで発売
- 2016年9月15日 – PlayStation4(CUH-2000)発売
- 2016年11月10日 – PlayStation4 Pro(CUH-7000)発売
ハイエンドモデルの登場
PS3と同じく最初期モデル発売から約3年でのスリム化モデルが登場した。前モデルから30%以上の小型化、初期モデル比で25%の軽量化、34%の消費電力軽減を実現しており、スリム軽量化という観点ではこの1回限りのモデルチェンジとなったが、今世代機から『PS4 Pro』というハイエンドモデルが登場するようになった。
遊べるゲームに違いはないが、通常モデルよりも処理能力が向上し4k解像度に対応。一部対応ソフトであれば専用の高解像度モデルが表示されるようになったり、フレームレートが向上したり映像表現がリッチになった(後のアップデートで未対応タイトルでも映像表現向上の恩恵が期待できるようになった)。通常コストダウンによる省スペース省電力低価格が定番だったハードのライフサイクルに新しい提案をした格好だ。
ではプレイステーション5の薄型化はいつ?
傾向をみれば今年か来年?
これまでのプレイステーションファミリーの傾向をみると3~4年でのモデルチェンジサイクルだった。プラットフォームそのもののサイクルを6~7年程度とするなら、おおよそ中間地点で新型機を投入する傾向にあるようだ。PS5の発売は2020年11月であることを考えても、最近噂に挙がっている2023年末のPS5スリムの発売は決しておかしな時期ではないだろう。
PS5独自の事情
前世代までのプレイステーションハードとPS5の事情の違いを挙げると、ディスクドライブを搭載した「PlayStation5」とディスクドライブを搭載しない「PlayStation5 デジタル・エディション」2モデルを同時並行して販売している点と、2020年からの慢性的半導体不足による供給の遅れの2点だろう。
複数のモデル販売については、過去にもHDD容量の違い程度はあったが、それらは搭載するHDDユニットの変更レベルのはなしで生産計画には大きく影響するものではないだろう。PS5のディスクドライブの有無は見た目のデザインに大きく影響し部品点数も異なる。基幹となる部品の多くは共通するとしても、スリム版を発売するために2モデル分の生産をしなくてはならないのは開発計画に影響がありそうだ。噂では真偽不明ながら「着脱式ディスクドライブを採用」という記事もあるほどだ。
また、半導体不足については2020年多くの業界が影響を受け、当時の生産販売計画を見直さざるを得なくなったことは間違いないだろう。コロナ禍も落ち着きを見せ始めた今、どれほどの影響が残っているかはわからないが、今年に入ってからPS5は安定的に入手できるようになったことで、状況は好転していることを願いたい。
※8月15日追記※ 新デザイン流出?新型は着脱ドライブか?
新型PS5が着脱式のディスクドライブを採用するのではないかと上述したが、8月14日Forbesの記事よりあるX(旧ツイッター)ユーザーが、真偽不明の新型PS5と見られるモックアップ筐体の動画を投稿した。全体的な見た目は原稿のPS5と相違は大きくないものの、両側面の中央に大きなスリットがあるのが特徴的だ。
もし、着脱式ドライブの噂が本当であれば、このスリットを境に下部を外装ごと取り外してディスクドライブの着脱をできるようにするためのデザインと思われる。記事でも触れられているが、これが本物だったとすると、次のPS5モデルはスリム型というよりは新たな新型モデルと思われる。