『Storyteller(ストーリーテラー)』ゲームクリアレビュー【評価・感想】

4.5
レビュー

編集 | クイック編集 | ゴミ

スポンサーリンク

はじめに

 趣味でゲームのレビューというものを書いてみて、ライティングというものがいかに難しいかがよくわかった。自分が何をみてどう感じたのかできるだけ正確に言葉に表す必要があるし、それをどんな順番で読者に渡せば理解しやすいかも違う。書き直しを続けているうちに、何を書いて何を書いてないかもあやふやになることだってある。だから物語を創造することだってきっと難しいに違いない。

 『Storyteller』で創造できる物語は複雑なものではないが、結末から逆算して展開を矛盾なく構成する思考はとても刺激的であり、実際のモノ書きとしての訓練になるのではと感じた一作だった。

概要

 『ストーリーテラー』はDaniel Benmerguiが開発、Annapurna Interactive販売のロジックパズルゲーム。本「Storyteller」の各ページにはお題が書かれている。プレイヤーはお題ごとに与えられた「場面」のパーツと「登場人物」のパーツの中から適切なものを選んで、マンガのコマのように組み合わせて各場面を作成し、規定数以内のコマを並べてお題に沿ったストーリーを作り上げられればクリアとなる。

やることはシンプル

 ひとつのコマを構成するのは「場面パーツ」が1個と、「人物パーツ」が1~3個の組み合わせに限られているので非常にシンプルだ。作るコマには本物のマンガのようにセリフを入れることはできないので、状況とキャラクターの配置だけで理解できるシンプルさで、場面パーツに当てはめられる人物パーツの数は決まっており、ある程度のヒントになる。人物パーツが「誰が」「誰に」、場面パーツが「何をした」に相当するので簡単かと思いきや、単純にひとつのコマを作るだけではストーリーは成立しない。ストーリーには文脈が必要だ。

文脈と関係性を意識する

コマ単独では前後関係を意識する必要がある。例えば死別を表現するのに、「墓場」の場面に墓石に「男」を墓石の前に「女」を配置すると「男の墓石の前に立つ女」の場面ができあがる。しかしそれだけは「死別」のストーリーは成立しない、コマ単独ではふたりの関係性が表現されていないからだ。男女は知人かもしれないし他人かもしれない。

 そこで新たに「出会い」の場面に男女を配置したコマを作り、さきほどの「墓場」のコマの前に差し込んで見るとどうだろう。「恋仲になった男女が、何かの理由で男が先立ち、墓前で女が悲しむ様子の”死別”」が表現できた。こうやって複数のコマを並べることで後ろのコマに特定の意味をもたせることができ、それがこのゲームの肝となるポイントだ。

よかったところ

単純なロジックでない発想が求められる

 『ストーリーテラー』が面白いのは、ゴールから手順を逆算する過程で、「お題であるAがBを殺すには、Bを恨む状況を作らなくてはならない。どうすればよいだろう」等登場人物の感情や、王や王妃、騎士、召使い等の立場、さらに人間関係を踏まえて順に遡っていくことが楽しい。

アニメーションがヒントにもなる

 場面パーツに人物パーツを配置すると、配置された人物はその時点で出来上がっているストーリーの状況に合わせた可愛らしいリアクションをとってくれる。配置を間違えてストーリーに矛盾が生じている場合はそれを示すリアクションがちゃんと返るので、どこかで間違っているという程度のヒントを得ることができる。

問題によって別解や条件がある

 ごく少数ではあるが、「特定の登場人物を一切使用しない」等、通常の解答とは別に達成方法が用意されている問題や、一度クリアしたお題に追加条件が付与され再挑戦できる問題がある。これらは常識的なストーリー運びだと達成できないこともあるので、突飛な発想を試される。

気になったところ

物語のバリエーションが少ない

 序盤こそおとぎ話をベースにしたストーリーが展開されるが、中盤以後は「誰かが誰かを殺す」というような問題のウェイトが多くなる。ビジュアルは可愛く重さはないが、誰かを嵌めるといったドロドロとした愛憎劇や謀殺劇などサスペンス寄りのシナリオが多くなり好みは割れるかもしれない。

全編を通したストーリーがない

 ストーリーを作るゲームであるが、基本的に各問題で単発のストーリーになっている。パズルを解いていった結果、大きなひとつのストーリーになるということではないので、シナリオ面でクリアのモチベーションは保ちづらいかもしれない。

ボリュームの少なさ

 一部追加条件が足される問題はあるが、全体的に問題数は限られており、ゲーム開始からクリアまで一気に進められる。あっさりエンディングにたどり着けてしまうため、プレイ完了の満足感はあまり高くない。非常に良質なパズルであることは間違いないので、もっとたくさん問題を用意して欲しかったというのが正直なところだ。

総括

 結末からストーリーの流れを考えるルールはシンプルでありながら、なかなか頭を捻る必要があり楽しく、キュートなビジュアルも相まって楽しいパズルになっている。問題数の少なさやストーリーのシチュエーションが限られている点は気になるものの是非プレイしてほしい一作に仕上がっている。

タイトルとURLをコピーしました