でたでたでたでた ついに出た!
2023年5月12日(金)『ゼルダの伝説 ティアーズ・オブ・ザ・キングダム』(以下『ティアキン』)がついに発売された。僕自身のオールタイムベストの1作と言っていい前作『ゼルダの伝説 ブレス・オブ・ザ・ワイルド』(以下『ブレワイ』)から6年の月日が流れ、前作の高い評判とゼルダシリーズではお約束となったクオリティアップのための延期等、ハードルが上がりに上がっていると言っていい。特に今作はストーリー面も遊びの面も、発売前に公開された情報はほとんどないと言ってよく、実際にプレイして驚きを楽しんでほしいと言わんばかりの意図と自信がうかがえた。実際はどうだろうか、さっそく遊んでみた。ネタバレはしてないつもりだけど読む際はご注意を。
遊びの幅がさらに拡張
『ウルトラハンド』の掛け算遊び
たとえば、焚き火から松明で火をとり、草原に火を放ってできた上昇気流で空を飛ぶ等、「オブジェクト同士が影響を与える遊び」は本作でも健在。『ティアキン』ではさらにオブジェクトが持つ機能を複数くっつけて新たな機能を実現する遊びが追加された。たとえば『乗り場』となる板、「移動」のための車輪、「動力」となる扇風機を組み合わせれば、自走する簡易な車になる。所持アイテムとの組み合わせ次第で、前作で言うところの「アイスメーカー」と「ビタロック」的な役割も果たしてくれる。いかにもクラフトといった感じで遊べる。ある程度ゲーム側で補正してくれるが、三次元的な操作を求められるので少し慣れが必要そうだ。たのしい。
『トーレルーフ』で謎解きの視野を広げろ
リンクの頭上一定の距離にある天井から上層へ通り抜けできる「トーレルーフ」。情報公開時は結構地味というか、崖登りを楽するための機能という印象だったがこれも奥が深かった。地形としての天井だけでなく、トーレルーフが「天井」と認識するオブジェクトなら通り抜けできてしまう。「ウルトラハンド」で持ち上げたブロックや岩を「モドレコ」で逆再生して通りぬけ、なんてこともできてしまった。大抵の天井は通り抜けできるので、謎解きする際の思考の視野も上下に広げてやる必要がある。前作では部屋や洞窟の開けた空間も、何もなければそれで終わりだし大抵のゲームはそうだ。だが今作は違う。全面を壁に覆われているようなシチュエーションでは、焦らずまず「トーレルーフ」が使えないか考えよう。少しずつ慣れて来たが空間の外にまで思考を広げるのはなかなか頭の訓練になっている気がする。たのしい。
『モドレコ』で謎解きに時間軸も加わった
オブジェクトの移動を逆再生する『モドレコ』はさらに大変で、時間軸を考える。常日頃、「この動きを逆再生したら?」なんて考える人はいないだろう。逆再生それ自体は『Braid(2008)』や『フォルツァ』シリーズのリワインド機能でも採用されて割とポピュラーだが、ゲームの一要素だけが逆再生の対象となかなか混乱した。それを活用して謎解きを考えるのはさらに難しい。前作では物理的な影響だけを考えればよかったところ、時間軸の視点も持つのはなかなか大変だ。たのしい。
頭のやわらかさが求められる
僕は『ティアキン』をプレイして謎解きの難易度が上がったと感じた。これは前作の発展系としての難易度ではなく、上述のアイテム機能から、前作とはまた違う方向性の発想を求められる僕の思考の柔軟性のなさが要因であって、ゲーム側が難易度を上げているわけではない(と思う)。たとえば前作は「A×B」の組み合わせ程度だったものが、「C×D×E」と項の種類が変わり、数が増えていった印象だ。間違いなく「掛け算の遊び」は広がっている。前作以上にプレイヤーの発想に応えてくれるゲームなのは間違いないけれど、僕のような頭の硬い人間にはこの「掛け算遊びの多彩さ」を前にちょっとだけ辟易してしまう。試行錯誤が楽しいゲームだが、プレイヤーの選択の幅があまりに広く途方にくれてしまう自分がいる。欠点というか自分の老いと脳みそとの戦い。
前作からの改善ポイントは?
濡れた崖滑りはアイテムと装備で解決
前作で唯一強いて挙げる欠点が、完全ではないが解決案があったのは嬉しかった。『ブレワイ』では雨が降るとクライミングの効率が下がり非常にストレスフルだったところ、『ティアキン』では装備や食事効果によって一時的に解決できるようになった。雨は結構な頻度で降るので正直仕様として無くしてほしかったが、料理に使う素材は収集が用意なのでそれほどストレスにはならなそうだ。
今作の不満なポイントは?
パラセールはもっと早く欲しかった
空を滑空できるアイテム「パラセール」は本作でも大活躍する。しかし『ブレワイ』よりも感覚的に取得タイミングが遅くなった。前作は実質的チュートリアルである「はじまりの台地」をクリアしなければパラセールは貰えず、パラセールによってはじまりの台地から脱出していよいよ本編スタートといった構成だったが、『ティアキン』ではパラセール取得前にチュートリアルが終わりゲーム本編に放り込まれることになる。本編に入れば進め方は自由だ。僕は自由行動が可能になった時点でメインストーリーから外れておもむくまま歩き回った。パラセールは重要アイテムであるので、うまい具合にパラセールを取得するイベントなり誘導なりがあると思ったがなかった。かなりの不便を強いられることになった。滑空できない不便さ以上に、せっかく祠を見つけたのに謎解きの過程で高所から落ちるしかないところがあると、体力が少ない序盤ではゲームオーバーになるしかない。数少ないストレスどころだ。結局メインストーリー上でゲットすることになるのだろうと察して戻らざるを得なくなった。プレイの手順を強制することは制作陣も臨んで居ないと思うがなぜこのような構成になったのだろう。前作を遊んだ人は、パラセールかその機能を果たす装備がどこかで貰えることは予想できると思うが、パラセールを知らない初プレイの人は大丈夫なのだろうか。始めからチュートリアルでほぼ全機能を解放した前作からなぜ変えたのだろう。
もっと謎を解かせろ
なんだかんだ僕は謎解きが好きだ。今作でも謎解きはおそらく無数に用意されているだろうし、前作より数が減ったなんてことはないだろう。しかしながら前作では祠探し系の謎解きについて少し不満があった。祠を探すことそれ自体が謎解きになっており、祠の中ではリワードを受け取るだけになっているものがあったからだ。僕はリワード目的に謎解きをしているわけではないので、宝箱に入った武器なぞいらない。かといって謎解きのご褒美に謎解きを用意すのは意味不明だ。だから、祠を探す系の謎解きは廃止して、フィールドでの謎解きと祠での謎解きを分けて用意してくれればスマートだった。本作は収集アイテムも増えているのでリワードアイテムの種類を変えることでうまく棲み分けできたように思う。