開発者のインタビューが読みたい話

開発者インタビューが読みたい話コラム

 僕はゲームメディアが掲載する開発者インタビューが好きだ。昔(2000年代くらい?)は特に海外作品がメイキング映像を収録していることが多くかったように思う。国産でもカプコンの『鬼武者』や『バイオハザード4』は初回特典としてDVDが付属していて、開発中のゲーム映像が見られて嬉しかった。最近は洋ゲーも含めてゲームに直接収録されるタイプのメイキングは少なくなったように思う。商品プロモーションを自社でダイレクトに発信する企業は増えているが、社内の事情を社外に発信するコンテンツを自社で積極的に行っているところは多くないので、ゲームメディアのインタビュー記事は本当に貴重だ。

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僕にとってインタビューの何が魅力か

技術的な話が好き

 僕が特に好きなのは、ゲーム開発の中で生じた「問題」に対し、クリエイターがどこを「原因」ととらえ技術的にどう「解決」したのかという点だ。以下は『星のカービィ ディスカバリー』で本来2Dアクションだったゲームを3Dの遊びにする仮定で生じたデザイン上の不都合の例。

カービィのキャラクターデザインが3D表現と
相性が悪いんです。
カービィが丸い形なので、後ろを向いてしまうと
どこを向いているのか、さっぱりわからないんですね。

引用画像
引用元:開発者に訊きました「星のカービィ ディスカバリー」

 ミニマルすぎるデザインのカービィがそもそも3D表現と相性が良くなく、とはいえデザインを根本から変えてしまえばカービィではなくなってしまう。カービィの見た目を変えることには限度がある中、「攻撃が当てにくい」ことを問題とし、プログラム側で当たり判定に補正をかけることで向きが分かりづらくても攻撃を当てやすくする方法で解決していた。実際は語られていないだけで他にも様々な調整があったと思うが、このような技術的な話が大好きだ。

ゲーム世界的な話

 子供の頃、友達の家で読んだ『バイオハザード2』の攻略本の設定資料を読んでハッとしたことを覚えている。詳細は忘れてしまったが、ゲームに登場するクリーチャーがなぜそのような見た目になったのか、デザイナーはちゃんと理論を組み上げてデザインしていることを知ったからだ。例えば、「ウイルス感染をきっかけに、暗闇では役に立たない目は退化してなくなり、その代わりに聴覚が異常発達した(うろ覚え)」というような記述だ。クリーチャーはクリーチャーっぽく描けばいんだくらいに漠然と思っていた自分にこれは衝撃だった。ゲーム内に登場するものの見た目には、それがプレイヤーに伝わるかどうかは別として、ちゃんとした「意図」があるということを知ったときだった。

 ファミ通.comに掲載された『スプラトゥーン3』の掲載記事でも、以下のような受け答えがあった。

――バンカラ街では、ナマコフォン(ガラケー)ユーザーが多いのには、何か理由があるのでしょうか?

井上 ナマコフォンの頑丈さと、どこでもつながるアンテナの強さがバンカラ地方には適していて、かなりのシェアを占めています。

ファミ通.com『『スプラトゥーン3』開発者インタビュー。新3号とコジャケの関係性、『1』に似たスペシャルが多い理由、バンカラなイカ世界を深堀り!』より

 キャラクターが持っている「ナマコフォン」はゲームプレイに関係しない飾り付け要素だ。なぜ現実世界で主流となったスマホ型ではなかったのか、ゲーム世界内での理由がちゃんと決められている。「ナマコフォン」なるものが頑丈かどうかなんてプレイヤーは知りようがないが、特に世界観を大切にする作品ではこのような小さな理由の積み上げがゲーム世界に説得力を持たせるのだろう。

おすすめ開発インタビュー記事

 というわけで、個人的におすすめするゲーム開発インタビュー記事を挙げておく。

 多分ゲーム会社が直接(直接!)情報発信することの先駆け的コンテンツ。インタビュアーが技術畑出身で当時社長もお務めだった岩田さん。ゲームの専門的なお話を上手に噛み砕いて整理しているので読みやすい。記事数が多いが特に任天堂自社開発タイトルの方が、デザイナーやプログラマーの方の登場も多く現場の苦労みたいな話もよくわかる。WiiU本体の記事など面白い。

 インタビューではない形式であれば結構古参コンテンツかもしれない。当時クローバースタジオ所属だった神谷さんと稲葉さんが手掛けた『大神(2006)』の制作過程を、交互に振り返りながら更新していったブログ。『大神』が完成に至るまでの紆余曲折が詳細に書かれていて、かなり読み応えがある。

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